夏といえば怖い話
夏です。
夏といえば怖い話。
数年前の夏の体験です。
女三人で香港からマカオへ遊びに行きました。
マカオのとある古いホテル、ベッドはみっつ
私の左、テラス側にSさん、右のドア側にYさん
真ん中に私が寝ていました。
最初に目が覚めたのはYさん、誰かがドアを
ノックしていると言って起きだしました。
ドアを開けても誰もいないし、廊下には窓がなく
風が吹き込んでいる様子もありません。
なのにがたがたうるさい、と怒っています。
今度はSさんが、電気を消してよー、と言い出しました。
Yさんは電気なんかつけてないわよ、と言います。
私はぼんやりとしながらも、なんか変な会話だなあ、と思って
うっすら目を開けました。と、その時見えたもの!
目の前に赤い顔が2つ浮かんでいます。ひとつは
ひげ面のおっさん、ひとつは少年、二人とも
ずいぶん困った様な顔をしています。
私はなぜか、あ・やばい、と思ってきつく目を閉じました。
ところが見えるんです、目を閉じているにもかかわらず
ぐんぐん迫ってきます。ますますやばいと思って
横を向いたら、なんとのしかかってきました!
子供の頃に上から2~3人で乗っかられた経験ありませんか?
肺が押しつぶされて息が吸えない、あの感じです。
どんどん重くなって、めちゃくちゃ苦しいです。
うわっとんでもなくやばい、その時私の中に、なぜか恐怖はなく
むらむらと怒りが込み上げてきました。くそ~、コノヤロー
なにしやがんだ!てめえ!!せーの、えいっ!
全身に力を込め、いっきにはねのけました。
ふっと楽になったその瞬間、Sさんが「ひえ~~っなんか来たあ!」
私はあわてて枕元のライトのスイッチを入れました。
一体何が起こったのか、3人で話し合い。
Yさんが起きだして目が覚めたSさん、ちょうど私の上でくるくる回っている
赤い光を3つ見ていたのだそうです。ところが私の上にライトは
ありません。部屋の電気は全部消してあります。
でも彼女は明るくてまぶしいと感じ、消してくれ、
いや、ついてないのやりとりをしているちょうどその時
私は押しつぶされそうになって苦しんでいました。
2人は私がすやすや寝ている、なんて奴だと思っていたようです。
そして私がはねのけた瞬間、Sさんのベッドの中に
人が入ってくる感触があったそうです。
それからは3人でホテルに置いてある聖書を広げたり、
うろ覚えの般若心経を唱えたり、
交通安全だろうがなんだろうがありったけのお守りを並べたりして、
なんとか眠りにつきました。
翌日香港へ戻ってお寺にお参りしました。
夕べの恐怖はどこへやら、さんざん遊んで食べてその夜。
疲れて寝ていると、いきなり「あっ、来た!」
濃厚な気配を感じたのです。とっさに枕元のライトに
手を伸ばしたその瞬間、またしてもSさん「ひええ~~、また来たあ!」
ついてくるなっちゅうの!
Sさんがしばらくの間私を恨んでいたのは
言うまでもありません。
★大木 理紗